韓非子 顧小利、則大利之残也

小利を顧みるは、則ち大利の残なり 韓非子

出典:講談社学術文庫 中国古典名言辞典 諸橋轍次

目標管理やノルマというものには一定の効果とデメリットがあります。

効果はもちろん従業員の意欲、行動の目標となり、活動の原力となることですが
デメリットは、各自の目標にとらわれ、会社、組織としての利益を損なう場合があるということです。

私がある時、営業と製造部門の会議に参加した時の双方の言い分です。

「営業部は努力して売り上げを獲得している。利益が出ないのは製造部の努力が足りないせいだ」
「製造部は限界までコストを削減している。そもそも利益の出ないような価格で受注を取られても赤字が増えるだけだ」

当時人事部門の私にはどちらの意見が正しいか判断がつきませんでしたが、このようなことに陥る原因が大体予想がつきました。

当時会社では事業部制をとっていて、製造部が作った製品を営業部に売るという内部取引が行われていました。

営業部では受注価格よりもある一定の割合の値付けで製造部に発注をかけることになります。そして、製造部では「発注書の数量」を目標として生産を行います。

営業部では売り上げさえあがれば、事業部利益も目標も達成できますので、
どんなに無茶な受注でもハイハイと受注してきます。
(実際無茶な条件でしか受注を取ることができないという問題もあります)

製造部では生産目標をこなすために、どんなに無理な価格や納期でも、無理な工程を組み、原価割れしてでも製造を行おうとします。そして無理な工程ですので、良品率が下がったり、人員の残業割り増しなど余計なコストがかかることになります。

結局、事業部制により、営業部門と製造部門で別々に売り上げと利益、目標を立てていた体制が一番の原因となり「利益がでない企業」となっていたのです。

この時に、営業部と製造部が一体となって売上と利益と生産の目標を立てることができたなら幾分赤字は解消されたかもしれません。
例えば、営業部は値引きの限界と納期の限界を把握し、それを超える受注は行わないというルールを定める。そして、製造部は迅速で厳密な原価計算と工程の最適化努力を行い、営業ー製造間の密な情報共有を行う。

売上重視で拡大した企業では、慢性的な赤字体質という場合も多々あります。
それも知らず知らずのうちに上記の例と同じく、目先の目標に捕らわれてしまった結果です。

「小さな利益にひかれることは、大きな利益を得るための妨げになる」
それぞれが別々に目標を追うのではなく、会社組織としての一つの目標を追うことを
忘れないようにすれば、きっと大きな利益が得られるようになるのではないでしょうか。


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